横になったり、起き上がったりした時や寝返りを打った途端に起こるめまい

渡邉忠彦(渡辺耳鼻咽喉科院長・日本めまい平衡医学会専門会員)

 横になったり、起き上がったりした時に急にめまいがする。また、寝返りを打った途端にぐるぐるーっと天井が廻って吐き気がして、暫く動けなかった。救急車で病院に行って、CTとかMRで調べたが特に異常は無かった。しかし、まだ寝返りが出来ないという人が居る。

 昨日、NHKテレビでこういうめまいをいっぺんに治す方法というのを紹介していたが、やってもらえないかとか、病院に入院して毎日点滴を受けているが、なかなかめまいが良くならない。めまいをいっぺんに治す方法をテレビで見たということを知人から聞いてインターネットで調べたら、めまいの専門医の中に先生の名前があったから来ました、是非それをやって欲しい。

 最近、こういうことをよく言われるようになった。NHKテレビに「ためしてガッテン」という番組があるが、この中で「脳の危険信号!めまいの真実」(2003年5月7日放送)というのがあった。ここに日本めまい平衡医学会理事長の高橋正紘先生が出て来て、「医師が患者の頭を動かすだけでめまいが治る」という治療法を紹介したためである。全国ネットのテレビの凄さと、情報を得る為にインターネットを活用している人が如何に多いかということを実感させられる事件であった。

 或る姿勢になるとめまいがする病気には、脳梗塞や脳内出血などの症状として起こるめまい(悪性発作性頭位眩暈症)と耳から起こるめまい(良性発作性頭位眩暈症)があるが、このうちで、我々が半規管結石症と呼んでいるものが、この治療の対象になる。これは何らかの原因で、耳石膜から外れた耳石の一部がゴミ状態で半規管の中を浮遊している為に起こると云われている病気である。このゴミは2週間もすれば吸収されて無くなるので、めまいも治まるが、症状がひどい場合はその間非常に苦痛である。この「医師が患者の頭を動かすだけでめまいが治る」治療法というのは、そのゴミを姿勢と関係の無い場所に誘導して、頭を動かしてもめまいを起こらないようにする方法であるが、半規管結石症ではない良性発作性頭位眩暈症もあるので、この方法で効果が無い場合も有り得る。

 ぐるぐるーっと天井が廻って吐き気がして動けないようなひどいめまいでも、良性発作性頭位眩暈症の場合は命に拘わるような事は無いが、脳梗塞脳内出血などの症状として起こるめまい(悪性発作性頭位眩暈症)では、めまいに加えて、物が二重に見える手足がしびれる舌がもつれる激しい頭痛がするなどの神経症状を伴うことが多いので、例えめまいが軽微でも要注意である。