スギ花粉飛散シーズンに備える花粉症対策について

【質問】花粉症のアレルギーを抑える注射などはありますか? いままでは普通の耳鼻科で薬と点鼻薬をいただいていたのですが薬を飲むとすぐ眠くなってしまい、1日中マスクをしていました。今年は注射などでアレルギーを抑えるような方法をとりたいと思います。もしそういった方法があれば通院したいと思っています。いつ頃から通院が必要か教えて教えていただけないでしょうか。

【回答】ご質問の意味が理解しかねる点も有りますが、注射でアレルギーを抑える方法は2種類あります。
特異的減感作療法と非特異的減感作療法です。

特異的減感作療法は、そのアレルギーの原因物質(アレルゲンといいます)のエキスを皮内注射することによりそのアレルゲン(スギ花粉症の場合はスギ花粉)に対する過敏性を低下させるようにする方法で、アレルゲンエキスを低濃度から徐々に濃度を上げて毎週1〜2回注射を繰り返して行く方法です。通常は1年以上根気よく注射を続けなければなりません。「スギ花粉症に対する急速減感作療法」と称して、入院の上約1ヶ月程度の短期間で急速に減感作を行なう方法を勧めている病院もあります。

非特異的減感作療法は、特定のアレルゲンエキスではなくアレルギー反応を抑制するような生体物質の皮下注射を毎週1〜2回繰り返して行く方法です。現在よく使われているのは、ヒスタグロビン・MSアンチゲン・ブロンカズマなどです。

その他、デポメドロールなどのデポ型ステロイド剤の鼻腔粘膜下注射があります。以前といっても20年ほど前にはよく行なわれましたが、副作用が強いので感心しません。

また、星状神経節ブロックといって局所麻酔薬を頚椎の横の神経節に注射する方法を勧めている麻酔科医がおりますが、花粉症に効果があるという科学的な根拠が薄弱ですので、耳鼻咽喉科専門医としてはお勧め出来ません。まあ気休め程度にはなりますが、眉唾物です。

以上申しましたように、注射だけでスギ花粉症のアレルギー反応を抑えることはなかなか困難です。今一般的に行なっている花粉症対策は、非特異的減感作療法と抗アレルギー薬による初期治療ですが、これだけでは完璧ではない面もありますので、症状の強い人には外科療法が行なわれています。

外科療法はいろいろな方法(メスによる器械的切除・高周波電流による電気凝固・レーザー光線による光凝固など)によってアレルギー反応を起こす病的鼻腔粘膜を除去する事ですが、最近では一番侵襲の少ないレーザー光線を用いた手術を行なう事が多くなりました。

今私どもで行なっている花粉症対策は、非特異的減感作療法と抗アレルギー薬による初期治療ですが、これだけでは不十分な患者さんにはレーザー光線による光凝固をお勧めしております。

治療開始時期はスギ花粉の飛散が始まる2〜3週間前が良いとされていますので、毎年スギ花粉に悩まされている場合には岐阜地区では1月中旬から準備を始めるのが良いと思っております。

【非特異的減感作療法】ヒスタグロビン・ノイロトロピンの皮下注射を毎週1〜2回注射おこなう。
【抗アレルギー薬による初期治療】眠気などの副作用は非常に個人差が強いので、患者さんに合った抗アレルギー薬を選択する。
【レーザー光線による光凝固】炭酸ガスレーザー光線を使って鼻腔粘膜(下鼻甲介粘膜)表面の光凝固を毎週1〜2回行い、経過を見ながら4回程度実施する。。

以上が一般的なスギ花粉症対策のメニューですが、飛散開始後はステロイド薬や抗アレルギー薬の点鼻、抗ヒスタミン薬の内服なども症状の推移によっては併用しております。( 渡辺耳鼻咽喉科 渡邉忠彦 )