フィブリン粉による鼓膜再生手術

【質問】Webページ拝見しました。会社の関係でベルギーにすでに7年ほど滞在しており、こちらからメールを出しております。現在46歳の男性です。よくある話と思いますが子供のころより両耳中耳炎を繰り返しており、その治療のために子供のころに右の耳の聴力はまったくありません。
 聞こえるほうの左耳も難聴がひどくなり仕事生活に支障をきたしております。
 鼓膜再生手術の話もありましたが、片方の耳しか聞こえないので大きな手術でもし左の耳が聞こえなくなるとまったくの完全な難聴になることを恐れて今日まできております。
 最近よくフィブリン粉による鼓膜再生手術の記事を見ることが多くなり一度問合せしようと思いメールを書いております。

【回答】多分46歳というお年を考えると、そろそろ老人性難聴が始まる頃かと思います。こういう感音難聴ある場合には、鼓膜の穿孔を塞いでも聴力の改善はあまり期待出来ません。
 耳漏(みみだれなど)はありませんか。耳漏が出ている状態では、短期間で鼓膜を作る手術を成功させることは困難です。
 聴力の状態が伝音難聴であり、鼓膜の穿孔を閉鎖することで聴力の改善を見込める場合であっても、鼓膜の状態(中心性穿孔でそれ程大きくな穿孔でないもの、中心性穿孔だが周辺が少し残っているもの、巨大穿孔で鼓膜全欠損の状態など)によって、手術難度、予後が大きく変わります。

【質問】個人的に今回2週間ほど日本に帰る予定でその折に一度見ていただき、出来れば滞在中に処置頂けないかと勝手に思っております。滞在は8月に2週間ほど最大3週間を考えております。診療の予約を取るないしはいっそのこと入院をする等の可能性はないものでしょうか。

【回答】外来で出来る程度のものは、私どもで手術可能です。もし入院が必要な程度の手術を要する場合は、適当な病院をご紹介致します。ご予定の具体的な日程をお知らせ下さい。調整してみます。

【質問】また健康保険が適用されるなど細かいことにつきメールでお知らせ頂けたらと存じます。

【回答】全て健康保険の適応となります。

【現在の状況】早々に返信賜り誠に有難うございます。症状についての問合せに先ずはお答させていただきます。
 耳漏については、確かに耳垂れは年によりますがに年に1回ないしは2回あります。1週間ぐらいで普通は治まります。また年によっては耳垂れがまったくない無い年もあります。多分耳垂れが無いようでも耳垢の様子から見て気づかない程度の耳垂れがあると思います。耳垂れを起こすのはやはり風邪を引きやすい冬に起しやすいです。
 耳垂れが出ても耳鼻科にはここ10年以上行っておりません。ベルギーにきてからホームドクターから一度だけ抗生物質をもらって耳垂れをとめたことがありますが治療をしたことはありません。耳垂れが出た時は、綿棒等で耳垂れを掃除し感染がひどくならないように気遣いしていると自然になおります。普段は耳も特にじめじめしたことは無く乾いています。風邪を引くか耳に水が入るとうのことが無ければ特に痛みや不快感や耳鳴り等の症状はありません。
 鼓膜の穴は両方の耳にあります。聞こえないほうの耳もいずれも耳垂れは慢性的に起きます。多分鼓膜の穴の症状はそれほど重くはないと思います。鼓膜の穴が塞がれば耳垂れ症状から開放されるだけでも助かるなという気持ちです。
 鼓膜の欠損状態ですが、耳垂れが始まると穴があきますが、耳垂れがとまると多分穴はかなり小さくなるように感じられます。鼻から息を入れて抜ける感じでわかります。

【回答】中耳炎の程度もあまりひどくなさそうですので、多分手術はうまく行くと思います。

【フィブリン糊を用いた鼓膜形成術の概要について】既にご存知のことと思いますが、この「フィブリン糊を用いた鼓膜形成術」は、仙台の湯浅涼先生が1989年に開発提唱して以来、手術侵襲が少ないこと、外来でも出来る場合があることなどから全国的に普及しております。私自身も何例か手術し、よい結果を得ております。

 湯浅涼先生は、現在「仙台・中耳サージセンター」を開業しております。所在地・電話番号などは、今手元にデータが無いのでお知らせできませんが、必要ならば調べておきます。湯浅涼先生は、元祖ですから、今までに何千例も手術し、患者さんも全国から来診されているようです。「飛行機で来た人には、手術翌日、耳管がよく通っていることを確認して、帰宅してもらい、1ヶ月後に来院してもらっているが、今まで特に問題はないようである」と云っていました。

 どういう手術かということを、一番程度の軽い「中心性穿孔」の場合について、申し上げておきます。
 先ず、鼓膜の麻酔をします。次に、耳の後ろを2
cm程度切開して、皮下組織を採取します。その後、鼓膜の穿孔縁に沿って、1mmほどリング状に鼓膜を切除します。次に、先程採取しておいた皮下組織を鼓膜の内側に挿入して穿孔縁にきっちりあてて、穿孔をふさぎます。その後、穿孔縁に沿ってフィブリン糊をつけて、鼓膜と皮下組織を接着固定して、手術は終わりです。耳の後ろの切開創もフィブリン糊で接着するので、包帯は要りません。じっと寝ている必要はありません。聴力も通常はよい状態に保たれます。

【質問】私の会社も愛知県大口町にあり岐阜市はよく存じておりますが、一時帰国するとなると実家が東京町田市で愛知県岐阜県には親類がいませんのでホテルに入って通院することになりますが、それで入院してしまったほうがホテルから通うよりましかと思いまして入院と思っただけです。わたしは両方の耳が悪いので手術をするとまったくツンボ状態のままで動き回るのは危険かなとも思いまして勝手に判断しただけです。

【回答】2〜3日入院して手術を受けられ、後は実家で過ごされて、ベルギーへ戻られる前に1〜2回診察を受けられるようにするのが、一番よいようですね。

【質問】7月にも、仕事で愛知県に戻るかも知れませんので時間の都合がつけば訪問したいと思いますので宜しくお願いいたします。

【回答】一度見せて頂けば、鼓膜の状態、中耳炎の現状と予後、聴力の状態と鼓膜穿孔閉鎖時の聴力改善の有無と程度などの情報が揃いますので、どういう手術が必要か、また手術によってどの程度の聴力改善が見込めるかといったことが分かります。

【質問】結果次第ですが通院で手術が出来るなら適当に東京よりの通院とホテル滞在のことも考えます。もし東京方面に同様な鼓膜再生手術を実施していただける先生が居られる様でしたらそちら様も紹介いただけないでしょうか。

【回答】町田市方面に知人がいますので、適当な施設があるかどうか調べてみます。
 もし岐阜で手術される場合には、次のようにするのがよいと考えております。外来で出来る程度(中心性穿孔であまり大きくない場合)であれば、私の所でも出来ます。入院手術を希望される場合は、適当な所(2施設ほどを考えております)をご紹介します。岐阜市民病院がご希望であれば、手配は出来ますし、他の公立病院も可能です。

【質問】日本訪問は8月の5日前後を考えております。ベルギーに戻るのは8月20日から25日ごろかと思います。生憎、お盆休みの時期が間に入りますが不都合ないでしょうか。病院、先生方の都合が悪ければお知らせください。予定を変更いたします。

【回答】ご希望に添えるような所を捜してみます。

【質問】先生にこちらから電話で連絡をとることは可能でしょうか。

【回答】お電話頂くことは、一向に差し支えありませんが、診療時間中はゆっくりお話も出来ませんので、昼休み時間内(午後1時から4時)にお願いいたします。医師会などの所用で外出することもありますので、その際にはお許し下さい。