私は補聴器相談医です

                  

日本耳鼻咽喉科学会は、平成16年に補聴器の正しい理解と普及および、適正な補聴器販売を目的として、補聴器相談医という資格制度を設けました。岐阜県にも、多くの補聴器相談医が居ます。この補聴器相談医の仕事を紹介します。

u    (1、お困りの状況を問診します)

補聴器が必要な聴力か、またどんな時に必要なのか丁寧に問診します。

補聴器の形や、値段などのご希望をうかがい、純音聴力検査と語音明瞭度検査などのデータとともに、適切な補聴器販売業者を紹介します。

u    (2、治る難聴か診断します)

補聴器を使わなくても治る難聴もありますので、耳の診察をします。

簡単なのもでは、耳垢を取るだけで済むこともあります。手術で治る場合もありますが、諸事情で手術を希望されなければ、補聴器という選択になります。

u    (3、言葉の聞き取りの検査をします)

基本的に補聴器は、音を大きくする道具です。言葉の聞き取りの検査をして、どのくらい音を大きくすれば言葉の聞き取りが良くなるかを確かめます。

具体的には、プロのアナウンサーにアとかキとかの単音を20個(50個の検査もあります)発音してもらい、それを録音したCDを大きめの音量から小さめのまで聞いてもらい正答率を作る検査です。

難聴によっては、大きすぎるとかえって正答率が悪くなる難聴もありますので、必ず必要な検査です。また、通常の会話の音量の正答率と、音を大きくした時の数値の差が少なければ、補聴器の効果にも限界があります。

言葉を聞き取る力は、耳だけではなく大脳などの中枢神経の能力に深く関係するからです。しかし、少しでも差があれば、それなりの効果があるので、限界を理解してもらった上での利用をお勧めすることになります。

u    (4、必要な方にはイヤモールドを作ります)

補聴器は耳栓を使って音を聞きますが、耳の形によっては音が漏れてピーピー音がすることがあります。

この現象をハウリングと言いますが、これは、耳の中に特殊な粘土(印象剤)を入れて型を取り、ご自身専用の耳栓を作れば必ず解消できることです。

多くは通常の補聴器販売店にて作ってもらえますが、過去に耳の手術などを受けて、耳の中の形が変形していると、相談医の先生の所に行って、耳の中の変形したくぼみに綿など詰めて、印象剤を固めた後にすっぽりと外に抜ける状態にする必要があります。固まった印象剤がくぼみに残って、手術で摘出せざるを得ないような事故の報告もあります。

u    (5、補聴器購入の助成の助言をします)

難聴の程度が70dB以上に重ければ、身体障害者の手続きがとれます。

身体障害者に認定されれば、補聴器の購入に際して、助成金がもらえます(所得によって金額は違います)。身体障害者の認定のためには、所定の診断書に耳鼻科医が記載し、障害者手帳が交付された後に、補装具の意見書をさらに耳鼻科医で作成して、助成金をもらうことになります。但し、助成金がもらえる補聴器には様々な決まりがあり、自由に選べるものではありません。

相談医の先生と、補聴器の業者の説明を受けて下さい。また、身体障害者に該当しなくても、補聴器相談医の診察を受けた上での補聴器の購入であれば、コミュニケーション障害の治療手段としての補聴器ですから、その旨を相談医の先生に診断書を書いてもらえば、医療費として確定申告の控除対象になります。

u    (6、良い補聴器販売店を援助します)

残念ながら、不適切な補聴器を販売する業者がいることも事実です。

使えない高価な補聴器に不満がある場合は、補聴器相談医に、どんな経緯で補聴器の購入をしたかをご相談下さい。状況によっては、クーリングオフができる場合もありますし、消費者相談センターに報告することで、不適切な販売業者を駆逐することができます。

u    (7、聴力の管理をします)

適切な補聴器を使っていても、難聴が進行したり変化することもあります。定期的に相談医の先生のところで聴力検査を受けて下さい。聴力の変化に応じて、販売店にて補聴器の再調整をしてもらいましょう。

 

(文責:赤井耳鼻咽喉科医院 赤井貞康)